研究 | WHO’S LAB |大阪電気通信大学研究室紹介サイト /whoslab/research/ WHO'S LABは、大阪電気通信大学の研究活動を発信する専用サイトです。 Fri, 05 Sep 2025 03:06:50 +0000 ja hourly 1 運動・スポーツにおける運動の経験や学習に着目して人間の成長とは何かを探る /whoslab/research/jinno-s/ Fri, 29 Aug 2025 01:02:22 +0000 /whoslab/?post_type=research&p=15042 運動やスポーツの経験は、人間にとってどのような価値をもつのでしょうか。神野特任准教授は、運動遊びをする子どもの様子から、人間が身体運動をするときに生じている推論に着目し、身体運動やスポーツの経験や学習が人間のどのような成 […]

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運動やスポーツの経験は、人間にとってどのような価値をもつのでしょうか。
神野特任准教授は、運動遊びをする子どもの様子から、人間が身体運動をするときに生じている推論に着目し、身体運動やスポーツの経験や学習が人間のどのような成長につながるのかについて基礎研究を行っています。

子どもが初めて側転を経験そこにどんな成長がある?

幼児がとくにきっかけもなく、でんぐり返りや側転などを初めてやってみることがよくあります。子どもに限らず大人も、初めてのテニスなのにラケットを上手に使ってボールを打ち返したり、通ったことのない山道を転ばずに歩いたりできます。人は、運動経験が少なかったり不確定な要素の多い状況でも、けっこう身体を動かすことができます。

神野特任准教授は、こうした身体運動ができる理由を、人間が目の前の事実に対して仮説を打ち立てる「アブダクション」と呼ばれる推論のおかげだと考えています。たとえば、幼児が初めて側転をしたのは、誰かが側転をしている姿を見て、人間には側転ができることや手をついて回ることを知ったからかもしれません。しかし、それだけでどうやって回転するのかというメカニズムまではわからないはず。幼児は少しの経験や観察から仮説的にメカニズムを導き出し、自分で検証しているとも考えられます。武道などで伝統的に実践されている、まず教えを守り、そこから自分で工夫して既存の型を破り、自分のスタイルを確立する「守破離」という成長プロセスにも、アブダクションと通じるものがありそうです。

知識や経験といった既知のものを飛び越え、未知のものを推測するアブダクションは、人間の成長の本質とも言えます。神野特任准教授は、アブダクションという概念を手がかかりに、身体運動やスポーツの経験による人間の成長要因についての基礎研究を行っています。

身体運動やスポーツの経験とアブダクションの関係を明らかにすることができれば、子どもの教育やスポーツ指導などへの応用も期待できます。高いところに登るなど向こう見ずな子どもの行動も、安全を十分確保できる環境でなら挑戦を後押ししたほうが成長につながる。そんなポジティブなとらえ方へと変わっていくかもしれません。

「人間が身体運動を試みる」ことと推論(アブダクション)の関係.

保健体育科の模擬授業体験から学生の成長要因を探る

神野特任准教授は、運動やスポーツの経験による人間の成長について、実証的なアプローチも行っています。その一つが、保健体育科の教員をめざす学生たちの模擬授業体験に着目し、何が学生の成長を促すのかを明らかにすることです。

模擬授業に参加する教師役、生徒役、さらに模擬授業を俯瞰的に見ている教員の三者を対象にアンケートをとり、体験の中身に目を向けて成長要因を探っています。継続的な調査によって、体験や学びの積み重ねによる変化や成長のタイミングなどについても分析する予定です。

模擬授業体験を通して学生が成長するための条件とは何か、一方で模擬授業の限界はどこにあるのかを解明。同時に、保健体育科の模擬授業用評価シートの開発も目標にしています。

体育授業において特有の教師行動に焦点を当てた模擬授業用評価シート(試作ver).

アブダクションの研究で

AIは人間に限りなく近づく!?

玄関先に置いてある靴が濡れている。その理由をAIは、天気のデータを確認したり靴の素材を分析したりして導き出すかもしれません。一方人間は、情報を集めることなく「子どもが水遊びに使ったからかな」などと考えがちです。こうした直感やひらめき、文脈から導く、決して合理的とはいえない推測がアブダクション。アブダクションはAIと人間の境界をつくるものであり、「人間らしさ」の一つとも言えそうです。AIがこの人間らしい思考法を身につけたときに起こる変化こそシンギュラリティ、なのかもしれません。

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人が自然の一部であることを実感できる環境デザインとは /whoslab/research/sakaguchi-t/ Mon, 25 Aug 2025 07:40:25 +0000 /whoslab/?post_type=research&p=15303 坂口教授が設計したある幼稚園の園舎では、雨水を樋に流さず落ちるままにする場所を設けました。雨が降ると、雨粒を手に受けたり、ぽつぽつ落ちる雨だれを眺める園児でいっぱいに。坂口教授は、自分も自然の一部であると実感できるような […]

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坂口教授が設計したある幼稚園の園舎では、雨水を樋に流さず落ちるままにする場所を設けました。雨が降ると、雨粒を手に受けたり、ぽつぽつ落ちる雨だれを眺める園児でいっぱいに。
坂口教授は、自分も自然の一部であると実感できるような環境デザインをテーマに、設計・教育・研究を行っています。

外気を取り込む自然換気 
設計した建物でその機能を検証

坂口教授は、大手ゼネコンでさまざまな建築を設計してきました。その経験を活かし、建築計画や設計実習などの科目を通じてこれからの時代にふさわしい設計教育を行っています。中でも「人と環境との調和」をテーマに、自然環境を積極的に取り入れた建築設計や建築環境デザインを追究しています。

特に着目しているのが、外気利用です。自然の風や建築物内外の温度差や圧力差を活かし、外気を取り込む自然換気もその一つです。省エネ効果につながることはもちろん、心理的なリフレッシュ感に加え、新鮮な外気を取り入れて室内のCO2やウイルスなどを排出することで快適で健康的な環境をつくりだすという点でも注目されています。

ゼネコン時代に担当した大学校舎の設計に導入したのは、階段室型ウインドチムニーです。室内の空気が煙突効果によって階段室を上昇し、上部に設けた排気口から卓越風による誘引効果によって排出される自然換気システムです。大学が立地する香川県高松市は晴れの日が多く、風がよく吹く土地柄であることから、地域の特性を活かす自然換気システムを設計しました。校舎が完成して学生や教職員の皆さまが使用し始めてから、自然換気システムの性能を検証。風洞実験や温熱環境の調査など物理的なアプローチだけでなく、人の行動や快適さの感じ方がどう変化したかなど人間学的な側面からも評価を行い、今後の建築環境デザインに生かすことのできる多くの発見が得られました。

高松大学新校舎棟:日除け効果のある壁柱と水平庇によるファサード構成.コミュニティスペースとしてウッドテラスを挿入し,中廊下に明るい日差しと通風を届ける.(出典:空気調和・衛⽣⼯学会 中国・四国⽀部 技術振興賞受賞業績の紹介 2012年2⽉29⽇)
高松大学新校舎棟:建物の基本骨格の工夫による自然換気システム.窓を開けると新鮮な外気が流入する.校舎両端の突出が階段室型ウインドチムニー.(出典:日本建築学会 作品選集 2011)

暑い日でも中庭に出たくなるわけは?
屋外空間の有効利用を探求

一方、屋外に人が出ていくことに着目した外気利用の研究も行っています。兵庫県の中高一貫校の校舎建築では、生徒が自由に利用できる屋内ホールを中庭と隣接して計画し、相乗効果で利用を促進するプランを採用しました。この学校でも、温熱環境など物理量の測定に加え、生徒の利用状況や中庭の快適さの感じ方についてアンケート調査を実施。暑い中でも中庭に出ている生徒が意外に多く、しかも快適感が高いといった興味深い結果が得られました。先行研究で示された、人間は自分で環境を選ぶことで、その環境を快適と感じやすくなるという説を実証する結果でした。

本学寝屋川キャンパスのキャンパス広場の利用についても、学生たちと研究を開始しました。商品を手に取って店を出るだけで自動的に支払いが完了する「キャンパスドンキ」1号店や学食、学生ラウンジなどのある校舎に面したキャンパス広場は、バスケットボールコートなどもある癒しと集いの空間です。行動調査やアンケート調査などを通じて、キャンパス広場の果たす役割、隣接する施設との相関関係、キャンパス広場の利用頻度を高める方法など、さまざまな観点から研究を進めています。

中庭とホールを自由に行き来できる空間構成.(出典:都市・建築デザインのための⼈間環境学 朝倉書店 2022年)
ホール,中庭,思い思いの場所ですごす生徒.(出典:都市・建築デザインのための人間環境学 朝倉書店 2022年)
本学のキャンパス広場:ベンチやバスケットボールコートなど、さまざまな居場所が設けられている.

学びや未来に前向きになれる

ウェルネスキャンパスとは!?

近年、心身ともに健康で前向きな人生を追求する生き方「ウェルネス」が注目されています。建築にも、このウェルネスをサポートする役割が期待されています。健康で快適に働くためのウェルネスオフィスは、日本独自の認証制度ができるなど今後ますます普及が見込まれます。ウェルネスオフィスがあるなら、ウェルネスキャンパスもあるはず。
快適で学ぶ意欲が満ちてくるような学校建築の実現に向け、今後、議論が盛り上がりそうです。

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次世代の電磁波で、超高速情報通信やイメージング技術の実現を目指す /whoslab/research/notake/ Tue, 19 Aug 2025 01:17:17 +0000 /whoslab/?post_type=research&p=15269 テラヘルツ電磁波(テラヘルツ光とも呼ばれる)は、現在のスマートフォンなどの無線移動通信に利用されている電波より周波数が1000倍も高い、未開拓の新しい電磁波です。この新しい電磁波を効率良く発生・検出・制御する技術を開発し […]

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テラヘルツ電磁波(テラヘルツ光とも呼ばれる)は、現在のスマートフォンなどの無線移動通信に利用されている電波より周波数が1000倍も高い、未開拓の新しい電磁波です。
この新しい電磁波を効率良く発生・検出・制御する技術を開発し、情報通信からセキュリティ応用まで幅広い分野での研究に挑戦しています。

テラヘルツ電磁波の超高感度検出に成功

情報通信においては、情報を送る電磁波の周波数帯域をどれだけ利用できるかで通信速度が決まります。テラヘルツ電磁波は非常に高い周波数を持ち、帯域も広く利用する事が可能なため、次世代の超高速・大容量通信への応用が期待されています。また、X線や光、電波などには無いユニークな特徴を持つことから、イメージングやセンシング、分光などへの応用も期待され、世界中で研究開発が進められています。しかし、テラヘルツ電磁波技術は、現時点では社会にはほとんど普及しておらず、実用化にはいくつかの課題があります。その障壁の一つは、テラヘルツ電磁波を効率良く検出する事が難しい点にあります。

テラヘルツ電磁波は、量子エネルギーが低いため人体などには安全とされていますが、通常の半導体や焦電素子では高感度に検出する事が難しくなります。そこで野竹教授は「非線形光学効果」と呼ばれる現象を活用してテラヘルツ電磁波を光へ変換し、光検出用のセンサで効率良く検出する事に成功しました。この手法では、レーザー光やテラヘルツ電磁波を誘電体に照射することで、結晶内の電子分極が非線形に応答し、テラヘルツ電磁波の情報が転写された新しい別の光が生成されます。これを光センサで検出することで、現在テラヘルツ電磁波の検出に一般的に使われている焦電検出器に比べて、100万倍もの高感度な検出が可能となりました。光のセンサは既に研究開発が進んでおり、市場規模も大きいため、高性能なものが安価に入手可能です。この点も、実用化に向けた大きな利点になっています。

テラヘルツ電磁波を光へ変換し超高感度に検出する実験系.50アトジュールという超微弱なテラヘルツ電磁波エネルギーの検出に成功.

超高速情報通信からイメージングまで
テラヘルツ電磁波の応用研究

開発した超高感度な検出手法を応用して、テラヘルツ電磁波でしか実現できない特殊なイメージング・センシング技術の開発にも取り組んでいます。観測対象から、これまで人類が得ることのできなかった未知の情報を抽出し、認識・理解しようとする研究は新たな情報通信技術の開拓とも言えます。また野竹教授の研究では非線形光学現象を応用していますが、この現象を用いることで、量子もつれ状態にある光子対を生成することも可能です。量子もつれ光子対を利用することで、絶対に盗聴不可能な究極のセキュリティを有する「量子通信」と呼ばれる最先端情報通信技術の開発にも繋がります。

これらさまざまな情報通信技術の研究に、通信工学科の学生とともに取り組んでいます。

ある半導体基板の内部をテラヘルツ電磁波でイメージングした例.結晶構造の欠陥らしきものが確認出来る.

見えない世界を可視化して

より安全で便利な社会を創造

テラヘルツ電磁波技術が実用化されれば、次世代の超高速・大容量情報通信が実現するだけでなく、リアルタイムイメージングやセンシング技術がセキュリティや医療、災害対策、材料解析などでのさまざまな分野で応用される可能性を秘めています。近い将来、世界中にテラヘルツ電磁波が飛び交う未来が実現するかもしれません。

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メタバースとデジタルツインで拓く 新たなリハビリテーションの可能性 /whoslab/research/matsui-k/ Thu, 07 Aug 2025 01:22:19 +0000 /whoslab/?post_type=research&p=15217 高齢化、技術革新によるリハビリテーションの多様化が年々顕著になってきています。松居和寛准教授は、医学的知識と工学技術を組み合わせて医療機器の開発やリハビリテーション技術の向上を図り、より効果的で個別化されたリハビリテーシ […]

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高齢化、技術革新によるリハビリテーションの多様化が年々顕著になってきています。
松居和寛准教授は、医学的知識と工学技術を組み合わせて医療機器の開発やリハビリテーション技術の向上を図り、より効果的で個別化されたリハビリテーションの可能性を探っています。

脳の機能を活用した「アバター療法」で
メタバース空間でのリハビリテーションを実現

松居准教授が取り組んでいるのは、メタバース空間でのリハビリテーションを目指した「アバター療法」の研究です。この研究では、筋電図をインターフェースとして用い、メタバース空間で自分自身の身体と異なる特性を持つのアバターを操作する新たな手法を取り入れています。「Physio avatar(フィジオアバター)EB」と名付けられたこの技術の核となるのは、脳の機能を逆手に取ったリハビリテーション効果です。例えば、脳卒中で麻痺した患者でも、脳が「動かそう」と送る微弱な筋電図をアバターの動きに変換することで、「動く」という体験が得られます。動けない人が動くという体験は脳の「強化学習」につながり、神経回路の再構築に重要な効果をもたらします。

逆に健常者が「動かしにくいアバター」を操作した場合には、脳が予測した動きと実際の動きの差異を修正する「誤差学習」により、パフォーマンスが向上することが期待されます。

あるいは、自分より足が長いアバターを操作した場合は、足の指先と手先に振動子を装着して触覚フィードバックを与えると、あたかも自分の足が長くなったような錯覚が生じ、この状態で歩くと、足がよく上がるようになる効果が確認されています。

VR技術を活用すれば、場所を選ぶ必要がなくなり、ネットワークを通じて遠隔地のセラピストと共にメタバース空間でリハビリテーションを受けられるようになるでしょう。

筋電図駆動アバター(Physio Avatar EB)を体験している様子.相反する作用を持つ筋の筋電図を取得し,その比を計算してアバターを操作している.
本来の腕よりも伸長されたサイズのアバターを触覚刺激とともに体験している様子.実際の指先に振動子を取り付けており,アバターの指同士が振れると触覚刺激が提示される.

電気刺激による身体特性の定式化で
運動器ヒューマンデジタルツインを構築

もう一つの研究の柱は、「運動器ヒューマンデジタルツイン」の実現です。これは人間の身体特性をデジタル空間に再現し、仮想空間上に精巧なコピーを構築する技術です。制御工学の「システム同定」という手法を応用し、電気刺激に対する身体の反応を精密に計測することで、その人固有の運動特性を数理モデルとして定式化します。

健常時にあらかじめ自分の身体特性を測定・保存しておけば、リハビリテーションの目標設定や装具のシミュレーションにも役立てられると考えられています。また、ここで得られる身体特性は筋肉量や脂肪の付き方によって個人差があり「サルコペニア肥満」など、筋肉量が著しく減少する疾患の新たな診断法として活用が期待されています。

電気刺激を使って身体特性を測定している様子.相反する作用を持つ筋に同時に電気刺激を行うことで,筋協調を考慮した形で身体特性を取得できる.

医療・リハビリテーション現場の変革にとどまらない
新たな労働スタイルを創造

Physio avatar EBや運動器ヒューマンデジタルツインが実用化されれば、場所や人材の制約を超えた効果的なリハビリテーションが可能になり、多くの患者の生活の質向上に貢献することが期待されます。現実世界では身体的な制約があっても、メタバース空間では健康な頃の自分として活動でき、同時にリハビリテーションも進行できます。労働人口の減少という社会課題に対する、解決の糸口になるかもしれません。

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「現場」の視点を起点に建物の「つくる」に関する課題を科学的かつ社会的に探究 /whoslab/research/moriya-k/ Tue, 05 Aug 2025 03:11:26 +0000 /whoslab/?post_type=research&p=15177 建物を「つくる」技やそのための仕組みに関する知を、理論化・体系化するのが建築生産分野です。現場の課題は工法や材料分野に限らず、建設DX、BIM、サステナビリティ、労働環境など、広域化・複雑化しています。守谷教授は、建築生 […]

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建物を「つくる」技やそのための仕組みに関する知を、理論化・体系化するのが建築生産分野です。現場の課題は工法や材料分野に限らず、建設DX、BIM、サステナビリティ、労働環境など、広域化・複雑化しています。
守谷教授は、建築生産を幅広くとらえ、研究を進めています。

建築中の現場を
地震から守るには

建物は、地震力に対する安全性を確保していなければなりません。したがって、基規準で設計手法や要求性能が定められ、構造計算も厳しく確認されています。一方、建築中の建物については、地震安全性の確認が義務付けられているものの、確認方法は施工者に委ねられているのが現状です。

鉄骨造の建物では、鉄骨部材同士を溶接やボルトで接合をしながら、骨組みをがっちりと組み上げていきます。以前の鉄骨柱の建方は、エレクションピースをスプライスプレートで仮固定した状態で、柱頭に張られたワイヤーを使って位置合わせをするのが一般的でした。近年は、このワイヤーを設置しなくても上下の鉄骨柱を一体化した状態で位置合わせができる建入れ調整治具を用いた鉄骨建方ワイヤーレス工法が主流となっています。守谷教授は、この工法における柱仮設接合部の地震安全性について、新たな評価法を研究しています。

鉄骨建方は、建築中に地震が起こった場合、重大な災害を引き起こす可能性が大きい工程。守谷教授の研究は、より高いレベルの安全性確保につながることが期待されます。

以前の鉄骨建方ではワイヤーが必要不可欠,施工エリアがジャングルジムのように「ワイヤーばかり」の状態となることも.
近年の鉄骨柱仮設接合部は,建入れ調整治具で固定された簡易な構造&ワイヤーレス.
FEM応力コンター図は,仮設部材よりも本設部材が強度上のボトルネックとなることを示す

材料・工法・品質・安全・契約・社会環境…
広い視野が求められる建築生産マネジメント

守谷教授は、30年以上、大手ゼネコンで海外を含む数多くの建築プロジェクトに幅広く従事し、建築生産、施工計画、PMCM、契約・補償、コンクリート材料などに関する専門的な知見を蓄積してきました。本学では建築の最前線で培った問題意識をもとに、建築生産マネジメント分野の研究・教育を展開しています。

建築生産は、設計と施工の連携、施工計画や工程管理、品質管理、安全管理やコスト管理、建築材料、建築技術など幅広い領域を含みます。守谷研究室では、現場施工や工場製作の実態調査と開発・改善などをテーマとする「建築生産技術研究」、建築工事のQCDSE管理全般や生産性向上のための手法や仕組みを検討する「施工計画・管理研究」、さらには建築を取り囲む社会情勢や条件、ニーズ、ステークホルダーの重要性に焦点を当てた「社会環境研究」の3つの柱で活動を進めています。

コンクリートの強度試験に使う試供体の型枠の研究、鉄骨製作の品質・トレーサビリティ管理に寄与するフローチャートの研究、防水工事の保証に関する研究など、幅広い活動を実践。現場の視点を出発点とした研究により、建築生産全体の社会的地位をより向上することを目標としています。

[建築生産マネジメント]=([建築生産技術]+[施工計画・管理])×[社会環境]

「現地一品生産」×「高い要求精度」=「大規模な自動化の難しさ」

建築は労働集約型産業の壁をどう越える!?

人口減少社会に突入した日本では、さまざまな分野で省人化が進み始めました。ものづくりの工程でも、AIやセンサーを活用した自動化、無人化技術が発展しています。一方で建築は、一品生産でほとんどの生産を現地で行うこと、電波環境が良好でない閉鎖空間が多いこと、寸法合わせなど精緻な作業が必要になること、などの特徴から、自動化・無人化が難しい分野と言えます。
労働集約型産業の高いハードルをどのように飛び越え、建築DXの未来がどのように進化していくのか楽しみです。

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透析治療の負担を軽減する排液による透析効率算出の可能性 /whoslab/research/matuura_m/ Mon, 04 Aug 2025 02:09:20 +0000 /whoslab/?post_type=research&p=15151 国内における透析患者数は約35万人と年々増加傾向にあります。血液透析の治療時間は、通常週3回、1回あたり4時間〜5時間の時間となっています。松浦特任講師は、これらの治療にかかわる負担を少しでも軽減できるよう、治療時に捨て […]

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国内における透析患者数は約35万人と年々増加傾向にあります。血液透析の治療時間は、通常週3回、1回あたり4時間〜5時間の時間となっています。
松浦特任講師は、これらの治療にかかわる負担を少しでも軽減できるよう、治療時に捨てられている排液に着目し、排液の分析により採血に代わる検査方法の確立を目指しています。

血液透析時の採血による
患者への負担軽減を目指して

腎臓の機能が低下すると体内の老廃物の排出や水分・電解質の調整がうまくいかず、腎臓の機能である水分調整、尿毒素の除去、血圧調整、エリスロポエチンの生成などができなくなります。透析患者は、週に3回の治療、薬剤の使用によって生命を維持しています。血液透析は、いったん体外に取り出した血液を「ダイアライザー」という人工腎臓機器を用いて浄化し、体内に戻す治療法です。血液透析が適切に行われているかを見て患者の状態を把握するには、血液検査で透析効率や電解質のバランスなどを確認する方法が一般的です。この採血は月に2回ほど行われており、貧血傾向にある患者にとって、大きな負担になっています。

松浦特任講師は9年間、臨床工学技士として透析業務に従事する中でこうした患者の負担を目の当たりにしてきました。負担の大きい採血以外に健康状態を確認できる手立てはないか。この研究は、身近な立場から患者の身体的・精神的負担を深く理解してきた経験が原点となっています。

血液透析はバスキュラーアクセス(VA)から血液を体外に取り出し,老廃物や余剰な水分を取り除き再び血液を体内に戻す治療.VAは高流量の血液を体外に取り出すために,動脈と静脈をつなぎ合わせた自己血管内シャントをはじめ,人工血管を用いた人工血管内シャント,カテーテルの留置などさまざまな種類がある.非生理的な治療のため常に患者バイタルや状態確認などの管理が重要.

排液の活用により
リアルタイムで患者の健康状態を把握

松浦特任講師が着目しているのは、血液透析時に出る排液です。排液とは、ダイアライザーの中で血液から除去された余分な水分と老廃物を体外へ排出した液体のことです。排液にはリアルタイムで除去された老廃物や電解質が含まれているため、患者の健康情報が詰まっています。そこで、この排液から透析効率が算出できないかと考え、各物質の光吸収特性の調査や波長と吸収量の関係性の解明を進めています。

現在はビタミンB12の光吸収特性のみが計測できた基礎研究の段階で、今後は尿素窒素やカリウム、リンなどの数値調査を計画しています。患者の健康情報が詰まっている排液を活用することで、リアルタイムで患者の健康状態を把握できる可能性があります。それが実現すれば、患者個々の透析時間・回数の設定が可能になると考えられます。さらには、健康状態に即した治療方針や生活指導も可能になります。まずは数値調査を進めながら、将来的には透析機器に装着できる簡易的な排液モニタリング機器の開発を目指します。

左:ビタミンB12のUVスペクトル
右:検量線

前向きな透析治療で

患者のQOL向上を実現

透析患者は治療に拘束される時間が長く、私生活にも制限があります。その影響から不安を抱えている人も少なくありません。この技術が実用化されれば、採血の頻度を大幅に減らし、患者の身体的負担を軽減できます。
また、患者個々の透析時間・回数の設定が可能となると精神的負担の軽減につながると考えています。透析治療により前向きに、そして自分らしい生活を送りながら治療を続けられる未来に期待が寄せられます。

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映像選択の「自己決定」が学習効果を向上最適な観察学習メソッドを科学的に解明 /whoslab/research/hiromitsu/ Tue, 29 Jul 2025 02:42:01 +0000 /whoslab/?post_type=research&p=14820 他者の行動を観察し、その行動を模倣することによって学ぶ「観察学習」は、教育現場やスポーツ、介護など、様々な場面で活用されています。廣光特任講師は、この観察学習における映像選択や視聴方法が学習効果に与える影響を分析し、最も […]

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他者の行動を観察し、その行動を模倣することによって学ぶ「観察学習」は、教育現場やスポーツ、介護など、様々な場面で活用されています。
廣光特任講師は、この観察学習における映像選択や視聴方法が学習効果に与える影響を分析し、最も効率的で効果の高い学習メソッドの提案を目指しています。

映像の「自己選択」が課題価値を高め
学習者の概念的理解を促進

映像を使った観察学習において、廣光特任講師は映像の視聴方法や選択方法が学習効果に与える影響に着目した独創的な研究を進めています。スポーツスタッキングの映像を用いた実験では、映像の視聴方法による効果を検証しました。正面から撮影した「二人称的視聴」と背面から撮影した「一人称的視聴」を比較した結果、1日目の学習段階では背面からの視聴が初期値からの向上幅で優れた結果を示しています。しかし、2日目に映像なしで実施した際は、両者の差が縮まることも判明しました。これは運動の習得効果と定着効果が異なるメカニズムを持つことを示唆しています。

また、キータッピング課題を用いた、自己選択群・他者選択群・自己他者選択群の比較検証では、自己選択を含む群が他者選択のみの群よりも良好な成績を示す傾向が見られました。特に注目すべきは、自己選択を少しでも含むことで成績向上の可能性が示されたことです。

さらに、自己選択が学習者の主観的感覚に与える影響を調査した実験では、自己選択した映像の方が理想的なパフォーマンスイメージとの一致度が高く、モチベーションとの間により良好な関係性を示すことが明らかになりました。

効率的かつ効果的な選択方法と視聴方法を検討した結果、背面から観察し、自己選択することによって運動学習を支援する可能性が示されました

脳波測定と瞳孔反応により「自己選択」の
神経科学的メカニズムを解明

この研究の先進性は、行動実験にとどまらず、脳波測定や瞳孔反応などの生理学的指標を用いて学習メカニズムを解明している点にあります。

質の異なる3パターンの映像を用意し、映像速度を変化させた際の反応を測定した実験では、自己選択群は他者選択群と比較して刺激に対する反応時間が長く、回答を誤った際の脳波反応も大きいことが判明しました。これは自己選択した映像に対してより深い思考処理が行われていることを示しています。

特に注目すべきは瞳孔反応の結果です。映像視聴中、自己選択群の方が瞳孔の開きが大きいことが確認されました。この瞳孔拡大は、ノルアドレナリン放出と密接に関係する脳の青斑核と関連しています。青斑核はノルアドレナリンを脳のほぼ全領域に分泌することが知られており、学習時の注意集中や記憶形成に重要な役割を果たします。

これらの生理学的データは、自己選択が単なる心理的満足感を超えて、実際に脳内の情報処理システムに影響し、学習効果を高めている可能性を科学的に裏付けています。今後はTMS(経頭蓋磁気刺激)も活用し、観察学習における映像選択がヒトの行動から中枢処理メカニズムに及ぼす影響をさらに詳細に明らかにしていく予定です。

選択映像の違いが観察時の知覚にどのように影響するのかを調査した結果、他者選択と比較して自己選択が脳内の情報処理を強化し、学習に寄与している可能性が示されました

学習メカニズムの解明で変わる
教育、医療、スポーツ現場の未来

最も高い効果を発揮する学習方法が明らかになれば、スポーツ現場だけでなく、学校教育や医療・リハビリテーションにも応用できます。また、一人ひとりが自分らしく活躍できる社会の創造にもつながります。さらに、忘却のメカニズム解明にも着手できれば、将来的にはスポーツだけでなく、医療・リハビリテーションなどへより幅広く役立つ可能性があると期待されています。

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プログラミング教育の格差解消に役立つ 次世代プログラミング教育環境を創造 /whoslab/research/nagashima-k/ Tue, 29 Jul 2025 01:25:50 +0000 /whoslab/?post_type=research&p=14997 高校でのプログラミング教育必修化に伴い、教育現場ではさまざまな課題が浮上しています。長島特任講師は、これらの課題を解決するため、誰でも手軽に使えるプログラミング学習環境「ビットアロー」を開発し、学習者のつまずきを早期発見 […]

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高校でのプログラミング教育必修化に伴い、教育現場ではさまざまな課題が浮上しています。
長島特任講師は、これらの課題を解決するため、誰でも手軽に使えるプログラミング学習環境「ビットアロー」を開発し、学習者のつまずきを早期発見・支援する技術の研究を進めています。

ブラウザ上で操作可能なBit Arrowで
教育現場の課題を解決

情報化社会の進展に伴い、小学校では2020年度、中学校では2021年度、そして高等学校では2022年度よりプログラミング学習が必修化されました。しかし教育現場では、さまざまな課題が指摘されています。公立学校はネットワーク環境や使用できるソフトに制限があり、Excelやメモ帳などのような教育用でないソフトを駆使して授業を進めている学校も少なくありません。そうした課題解決のために、長島特任講師らが共同開発したのが、オンラインプログラム環境「Bit Arrow」です。

「Bit Arrow」最大の特徴は、ウェブにアクセスするだけで使用できる点です。教育用に開発されたツールの多くは、パソコン1台ずつにプログラミング言語に対応したソフトやアプリケーションのインストールが必須ですが、「Bit Arrow」は準備段階の負担を完全に排除し、ブラウザ上の動作で完結する環境を実現しました。

さらに、視覚的なわかりやすさも追及しています。プログラムの実行中にエラーが発生した場合は、問題箇所を視覚的に表示し、具体的なメッセージを提示することで自力での問題解決が可能となります。インタラクティブなプログラムも実行でき、数字当てゲームやブロック崩しゲームなどを通じて「遊びながら学べる」環境を構築しています。

実行ボタンを押すと、実際にゲームも楽しめる.

つまずき検出技術で実現する
個別最適化された学習支援

40人程度のクラスを一人で指導する教師の負担軽減も重要な課題です。「Bit Arrow」には教師向けのダッシュボード機能があり、プログラムを実行するたびに収集するログの情報を元に、各生徒の学習進捗、エラー発生回数、最後にプログラムを実行してからの経過時間などをリアルタイムで確認できます。

中でも長島特任講師が最も注力しているのは、プログラミング学習における「つまずき」の自動検出技術です。つまずきには大きく2種類あります。一つはエラーメッセージが表示される明確なつまずき、もう一つは、エラーが出なくても思った通りに動かないという潜在的なつまずきです。前者は、システムが自動的にエラーの原因を特定し、適切なアドバイスを提示する仕組みをすでに実装しています。今後の課題は後者の検出で、学習者の行動ログを詳細に分析し、AI技術を活用してつまずきのパターンを特定する研究を進めています。最終的には、つまずいている学習者の本質的な問題をシステムが自動的に検出し、個別にアドバイスできる環境の構築を目指しています。

エラー率や実行からの経過時間、実行履歴などが一目で分かる.

プログラミングの枠を超え

すべての生徒が輝く未来へ

Bit Arrowのようなシステムが教育現場のスタンダードになれば、プログラミング学習に限らず、他の教科でも個別最適化された学習支援が可能になります。教師の負担も大幅に軽減され、より創造的で質の高い教育に集中できる環境が実現するでしょう。プログラミングが身近になる未来もそう遠くありません。

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実世界の情報収集・分析とデジタル画像処理で社会課題に挑戦 /whoslab/research/nagano-y/ Wed, 23 Jul 2025 05:47:56 +0000 /whoslab/?post_type=research&p=14943 実世界の情報を集めて分析し、課題解決に活用するのが「実世界情報学」という学問分野です。永野教授は、誰でも簡単にプロジェクションマッピングができる技術や、レントゲン画像をリアルタイムに伝送して脳血管内治療を遠隔手術するロボ […]

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実世界の情報を集めて分析し、課題解決に活用するのが「実世界情報学」という学問分野です。
永野教授は、誰でも簡単にプロジェクションマッピングができる技術や、レントゲン画像をリアルタイムに伝送して脳血管内治療を遠隔手術するロボットシステムなど、幅広い研究を行っています。

誰でも簡単に
プロジェクションマッピングができる!?

映像を立体物に投影するプロジェクションマッピングは、アートやエンターテインメントだけでなく、近年では製造業や教育などさまざまな分野へと用途が広がっています。単に視覚的な演出というだけでなく、空間をメディア化する技術へと進化を遂げています。

プロジェクションマッピングでは、立体物の形に合わせて映像を正確に変形する必要があります。立体物の外に映像がはみ出ないよう外形に合わせて映像を切り出し、さらに、2Dの映像を表面が凸凹した立体に投影してもゆがんだりしないような変形処理が不可欠です。投影する対象が人体や動物、車など自由曲面で構成された立体だと、その変形を画素単位の非常にきめ細かなレベルで行う必要があります。

永野教授はこうした手間のかかる処理を自動化し、誰でも簡単にプロジェクションマッピングができる技術を研究しています。マネキンの胸像に顔の画像を投影する装置・アプリの開発では、10分程度で簡単にプロジェクションマッピングができる自動化システムを実現しました。

また、プロジェクター4台を使って4方向から映像を立体物に投影し、360度から鑑賞できるシステムの開発にも挑戦中です。さらに研究を進め、博物館などで展示物に映像を投影して、ARのように文字や映像の情報をスマートフォンやヘッドマウントディスプレイなしで楽しめるようなシステムの開発をめざしています。

胸像への映像アートワーク.
360度プロジェクションマッピング.
ウサギの動画左側:各映像を順番に投影.
ウサギの動画右側:4枚の映像の投影結果.
茶色の兎像を3Dデータ化し、その映像を白色の兎像に投影.

遠隔地から脳血管カテーテル治療ができる 
ロボットシステムの開発

永野教授は、医療現場の問題解決にもチャレンジしています。脳動脈瘤やくも膜下出血など脳血管の病気の治療法として、カテーテルと呼ばれる細い管を血管内に通して治療する脳血管内治療があります。開頭手術に比べて患者の負担が少ないため、近年、急速に発展しています。一方で、これは脳血管をX線で造影しながら行う長時間にわたることも多い治療で、医師など医療従事者の放射線被ばくリスクが問題になっています。

そこで永野教授は、血管内治療支援ロボットを使ってリモートで治療する、遠隔手術システムの開発に研究を進めています。血管内治療支援ロボットは、術者が操作するジョイスティックの傾きデータをロボットに転送し、そのデータに合わせてガイドワイヤーやカテーテルなどのデバイスを駆動するという仕組みです。デバイスに強い力がかかると血管壁を傷つける可能性があるため、ロボットの力加減のコントロールが不可欠。センサーで測定した力加減を音程の高低に変換して術者にフィードバックし、血管壁にかかる圧力の具合をリアルタイムに把握できるようにしています。

2024年には80キロ離れた地点間で模擬手術を実施し、臨床応用につながるさまざまな成果を上げました。今後は、力加減のフィードバック機能をさらに高め、安全なロボット技術の開発を進めるとともに、Wi-Fi回線WAN回線による実証を重ね実用化をめざします。

血管模型を使ったリモート環境による動作実験の様子

ゴッドハンドの技を学んだ
AIによる自動手術システムが実現!?

遠隔治療システムの開発は、医師の放射線被ばくはもちろん、少子高齢化の進む社会に福音をもたらす技術です。永野教授は今後、AIを活用した血管内治療支援システムの開発をめざし、将来的には自動手術の実現も視野に入れているとか。「ゴッドハンド」と言われる名医の技を学習したAIを搭載した自動手術システムが全国の病院に配備されれば、医師不足や医師の偏在といった深刻な医療問題の解決にもつながることが期待されます。

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海はエネルギーの源!海洋の温度差を利用した発電を研究 /whoslab/research/yasunaga-k/ Wed, 26 Feb 2025 05:22:19 +0000 /whoslab/?post_type=research&p=13143 再生可能エネルギーの中でも、まだまだ未利用のエネルギーが数多くあります。中でも注目されているのが海。安永准教授は、海水の温度差を利用した発電の技術を研究しています。無尽蔵とも言える海水を資源として活用し、海に囲まれた温暖 […]

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再生可能エネルギーの中でも、まだまだ未利用のエネルギーが数多くあります。中でも注目されているのが海。
安永准教授は、海水の温度差を利用した発電の技術を研究しています。無尽蔵とも言える海水を資源として活用し、海に囲まれた温暖な島しょ国や地域の生活を豊かにする技術です。

たった20度の温度差で 
電気をつくる技術とは!?

エネルギーは「違い」によって発生します。温度、圧力、濃度などが違うもの同士の間で、同じ状態になろうと移動する力がエネルギーになります。
安永准教授の研究テーマは、温度の違いから生まれるエネルギー。つまり温度差を使った発電です。中でも注目しているのは、海の表層と深層の温度差を利用した海洋温度差発電です。海面表層の25℃~30℃の海水でも、水深約600mになると海水温は5℃~10℃まで低下します。この約20℃という小さな温度差を発電に利用する研究です。
通常、火力や原子力発電では水を循環させて水蒸気の力を利用します。海洋温度差発電は利用する温度差が小さいため、沸騰する温度が低い液体(作動流体)を循環させます。その液体を表層の海水で温めて蒸気にし、その蒸気でタービン/発電機を回して発電します。回転動力となった蒸気は、そのあと深層の海水で冷やされ液に戻ります。このサイクルを繰り返すのが、海洋温度差発電です。

海洋温度差発電(OTEC)の動作原理

さらに効率よく熱を伝える 
熱交換器を開発

海洋の熱は、太陽熱や風力などと同じように、発電時に温室効果ガスを排出しないため環境にやさしく、半永久的に利用できる持続可能なエネルギーです。一方で、利用できる温度差が小さいため、エネルギー密度が低く、非常に大きな熱交換器が必要という難点があります。そのため、発電量を大きくするには、熱交換器の性能を上げて、コンパクトにする必要があります。このとき問題になってくるのがコストです。海洋温度差発電では、熱交換器内に海水を流すことから、腐食に強いけれども高コストな素材-チタンを使う必要があります。
そこで安永准教授は、熱交換能力を上げるために熱交換器の数(伝熱面積)を増やすのではなく、「伝熱効率」に着目し、熱交換器の効率を高める技術を開発しています。伝熱効率を上げるには、スムーズに流れて効率よく熱が伝わるようにすることが重要です。安永准教授は、プレートを何層にも重ねたコンパクトな プレート式熱交換器の形状を研究しています。
また、伝熱プレートの中を流れる海水の流れにも、効率を高めるためのヒントがあります。海水はスムーズに流れるだけでなく、ほどよく乱れて流れることで伝熱効率が高まるのだとか。安永准教授は、技術的には相反する「スムーズな流れ」と「乱れ」のバランスを取り、最も効率よく熱を伝えるプレートの形状や表面加工をシミュレーションと実験の両面から探求しています。

プレート式蒸発器(蒸気をつくる)の模式図
プレート式凝縮器(蒸気を液に戻す)の模式図
鉛直プレート面での凝縮
              熱交換器内部のシミュレーション(左:流速分布 右:温度分布)

電気と水を提供する技術で
島しょ国・地域の暮らしが変わる!?

島しょ国・地域では、現状、化石燃料を船で運んで発電し、その大部分を「水」をつくるために使っています。海洋の温度差は、海水の淡水化のエネルギー源としても利用されています。
海洋温度差発電が本格的に実用化されれば、地元で消費する電気だけでなく他に回せるだけの電気も作れるようになり、新たな資源が生まれる可能性も十分あります。電気と水、新たな産業など、この研究は温暖な地域の島しょ国・地域の未来を創造する技術として期待が集まっています。

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